KYOSUKE
お嬢は起きだしてくると思った。
だけど苦しそうに眉を寄せかすかに身をよじったただけで、彼女は起きだしてくる気配がない。
俺は額から手を退けると、彼女の顔を覗き込んだ。
おなかがまた痛くなってきたのかな……
こんなことが彼女の痛みを和らげるのかどうか分からなかったけど、俺は彼女の下腹部に手をやり軽くさすった。
お嬢のおなかは、内臓が詰まってるのかどうか謎なぐらい薄くて……でも女性特有の柔らかい感触がした。
「…………と」
握ったままのお嬢の冷たい指先がぴくりと動き、彼女が何事か呟いた。
寝言だろうか。
はっきりと聞こえたわけじゃなく、お嬢の顔を見ると彼女は苦しそうに眉を寄せ―――
一粒の涙を流していた。
俺は彼女が泣くのを見たことがこれで二回目だ。
一度目は俺が酔いつぶれたとき…彼女は庭先にある桜の木を見て涙を流していた。
「……お嬢?」
怖い夢でも見てるのだろうか。
起こすべきだと思って、俺は彼女の華奢な肩に手を伸ばした。
その瞬間
「やめて。雪斗―――
やめて………」
お嬢は涙を流しながら、僅かながらに首をよじった。