KYOSUKE
お嬢は腕で乱暴に涙を拭うとふらりと立ち上がり、まるで酔っ払いのような足取りでふらふらと茶の間から出て行った。
俺は
後を追うことができなかった―――
彼女の異様とも言える態度に、どう対処していいか分からなかったのだ。
ただ呆然と、払われた掌を見つめ…
はじめての拒絶の言葉が、まるで呪いのように俺の脳内を支配し
彼女の笑顔や、優しい思いやり、ひたすら元気の良い明るいお嬢の……
今までの様子が、全部ブラックホールへ吸い込まれていくような
絶望的な気持ちに陥った。
――――
――
その日は一日龍崎家に居たけれど、お嬢が部屋から出てくることはなかった。
夕方になって、龍崎組が所有する不動産会社の社長を勤めているマサさんが帰宅してきた。
「おかえりなさい」
のそっと顔を現すと、
「ぅお!何でぃ、キョウスケ!!ゾンビみたいな顔しやがって!!」とびっくりしたように飛び上がった。
ゾンビ……
まぁ今の俺はちょっと抜け殻みたいになってるだろうけど…
それでも“本当のこと”を知るまでは、抜け殻になんてなってられない。
「ねぇマサさん。ユキトって誰ですか?」
俺はマサさんに問いかけた。