KYOSUKE


ビールを一口飲んで、「おめぇも飲むか?」なんてもう一本を薦めてくる。


俺はちょっと悩んだのち、「いただきます」と言って結局受け取った。


口からタバコの煙を吐きながら、マサさんは遠い目をして切り出した。




「雪斗さんは会長の実の弟で、生きてりゃ23ってとこかな?」




会長の………弟?


つまりはお嬢のもう一人の叔父さんか。


だけどお嬢も会長もそんなこと一言も…それに組の人だって言わなかった。


だからもう一人叔父がいることすら俺は今の今まで知らなかった。


俺はビールの缶に口をつけ、探るように目をあげた。


「生きてればって…その方はもう亡くなってるんですか?」


俺は言葉を選んで慎重に切り返すと、


マサさんは何から話そうか考えをまとめるようにして首を傾け、やがて決意したようにビールにまた一口、口をつけた。




「いや。俺ははっきりとは知らねぇ。生きてるのか……死んだのか……」




俺はビールをテーブルに置くと、顔ごとマサさんに向けた。


「それって…失踪ってことですか?」


「まぁ体よく言やぁな」マサさんはちょっと苦笑いをして、タバコを灰皿に押し付ける。


苛立っているのだろうか。力を入れた指で小さくなったタバコがぐにゃりと曲げる様は乱暴だった。





「でも俺は確信している。雪斗さんは死んでるんだって」






視線は向かい側の俺を見ているはずなのに、どこかうつろで、俺よりずっと遠くを見ているようだった。


「いつ……居なくなったんですか?」


俺の質問に、ようやくマサさんは俺の顔を真正面から見据えてきた。



「二年前の春ごろ……」



マサさんは二本目のタバコに火を灯し、とつとつと喋りだした。





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