KYOSUKE
まさかお嬢を―――
俺の中を嫌な想像が駆け巡る。
否定したい気持ちでいっぱいだったけれど、マサさんのこの態度と―――お嬢の異常とも言える拒絶の反応を目にした俺は
それがもはや想像の範疇を超えていることは確かだった。
「それから……俺はさりげなく雪斗さんの行動に目を向けてるようになって…雪斗さんは大体夜同じような時間にお嬢の部屋を訪れて……
その先は―――確かめられなかった……」
搾り出すような弱々しい声が、狭い部屋に響くことなく、それでも俺の耳にははっきりと届いた。
「確かな証拠があるわけでもねぇし、お嬢の方から相談されたわけでもねぇ。
でもその頃明らかに元気をなくしてやつれていくお嬢の姿を見てると、お嬢が雪斗さんに何をされてるのか俺にだって想像できた。
どうするべきか悩んで―――
俺は会長に相談したんだ」
開いた目を少しだけまばたくと、僅かな痛みを覚えた。
目も喉もカラカラに渇いていて、俺はそろりとビールを口にした。
ぬるくなったビールはちっともうまくないし、アルコールも感じなかったけれど
喉を潤すには充分だ。
「……それで…」それでも声はかすれて、上手く言葉にできなかった。
「会長は驚かれていたよ。驚愕と言っていいぐらいに。
そしてその晩―――雪斗さんは突如姿を消した」