KYOSUKE
俺はごくりと唾を飲んだ。
失踪した龍崎 雪斗―――
俺は雨龍なる日本刀を目にしたことはない。家宝とは言え、組に代々伝わるものなら居間に飾られてる筈だ。
何故ならそれが組の象徴であり、権威を示すものだから。
鷹雄組にも事務所の親父の背中側の壁に仰々しく飾ってある。
その日本刀がこの家のどこにもないことはおかしい。
お嬢の包丁、そして会長の消えた雨龍(日本刀)―――
「雪斗さんを殺ったのはお嬢か、会長か―――
それともお二人か。
その日を堺に雪斗さんは
姿を消した」
すべてを告白し終えても尚、マサさんは顔を上げることがなかった。
分厚い手で覆った隙間から、僅かな嗚咽が漏れてくる。
「俺が……
俺がもっと早く気付いていれば。俺が会長に報告しなければ。
俺が―――何かもっと別の方法を考えていれば……
あんな結末じゃなかった気がする」
お嬢と会長―――二人は過去の罪を共有することでも絆があったのだ。
でもお嬢は―――きっとその過去をこれからも背負い続けていく。
あの心優しいお人は……
ずっとずっと忘れはしないだろう。