KYOSUKE
俺の笑顔にようやくお嬢もほっと安堵したのか、表情を緩めて俺を見上げてきた。
「良かったぁ。すっげー怒ってたらどうしようかと思ったけど」
「怒るってどこにですか?」
俺はとぼけた。
お嬢はちょっと目をぱちぱちさせ、
「いや…怒ってねぇんならそれでいいけどよ」なんて恥ずかしそうに顔を赤らめる。
お嬢はすごく心優しい。
暗い過去を背負っていながらも―――お嬢は強い。
太陽のように明るい笑顔も、ひばりのような軽やかな声も
静かできれいな泣き顔も全部―――
「好き―――」
俺はお嬢を見下ろして、彼女の瞳をじっと見つめまっすぐに言った。
お嬢が目をしばたたかせて、俺を見ている。
だけどその視線に驚きの色が浮かんで、ゆらゆらと揺れていた。
すごく好き
ほんまに―――好きや
すぐ近くまで出かかった言葉を
俺は慌てて飲み込んだ。
俺が今ここで告白するとお嬢はきっと困るだろう。
きっとすごく悩むだろう。
俺はお嬢を―――困らせたくない。
いつでも笑っていて欲しいんだ。
「チョコレート。好きです」