KYOSUKE
俺の言葉にお嬢は弾かれたように背筋を正した。
「あぁ、何だ。チョコのことかよ。おめぇがあまりに真剣だからちょっとびっくりしたぜ」
照れ隠しに大げさな仕草で髪を掻き、お嬢はチョコレートのパッケージをびりびりと破いた。
開け方が豪快だった。
動揺を押し隠すため―――じゃないな…
彼女はきっといつでもこうだ。
クスっ
それが妙に笑えてきて、俺は笑い声を漏らした。
「な、何だよ。笑うこたぁねぇだろ!アメリカ方式だ!」
「そうですね」
小さく答えながら、俺はそれでも彼女がパッケージを破る様を楽しそうに眺めた。
パカッ
蓋を開けると、色とりどり…形も様々なチョコレートの粒が列をなして並んでいる。
「いいなぁリコは」
チョコを眺めながら、お嬢は羨ましそうに頬を緩めた。
“リコ”って言う名前を俺はお嬢からよく聞く。お嬢からは親友だと聞いていた。
彼女のことを喋るときお嬢はすごく楽しそうだ。
俺はそれだけで幸せになれる。
「夏休みに家族とオーストラリア旅行だって。リッチだよなぁ。あたしは国外に出たことないってのに。おめぇは行った事ある?」
チョコを選びながら急に話を振られ、俺はチョコを選ぶ手を止めた。
「ハワイぐらいなら」
「えーーー!お前ンとこもリッチじゃん!!さてはどっかの御曹司だな?」
お嬢は明るく笑って、チョコを一口口に入れた。
いつも通りの俺たち。
小さなことでこの日常は壊れてしまうかもしれないけれど、俺は今の幸せを精一杯噛み締めるよう笑顔を浮かべた。