KYOSUKE
チョコはうまかったけど、そう何個もイケるわけではない。
3個程食べて、口の中が甘さに満たされると俺は水を飲んで「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「え~?もぉいいの??まだいっぱいあるぜ?」
と、お嬢は口をモグモグさせている。
「いえ。俺はもう…他の人にもおすそわけしましょう」
「そうだな。おめぇは優しいな」
にこっと笑ってお嬢がチョコの蓋を閉める。
「ここに置いとけば誰か食うだろ」
そう言って、チョコは台所のダイニングテーブルの上に置かれ、俺たちは台所を出た。
――――
――
その夜は……
何となく寝苦しかった。
俺は暑がりじゃないから、あまりエアコンをかけない。
真夏でも窓を開けて扇風機で寝る方だ。
いつも通りの夜なのに、暑さが体をじわじわと侵食し、気持ち悪いほどの熱気が部屋を満たしていた。
それでも2時間ほどは粘っていたけど、2時間を過ぎるとさすがに限界を感じ、俺は諦めてエアコンをつけるため、窓を閉めようとした。
この部屋は2階にあって、ちょうど庭に面した位置にある。
何となく窓の外を覗くと、あの大きな桜の木が目に映った。
緑の葉を茂らせた木々の枝が、風でざわざわと揺れている。
枝と枝が重なる音が、奇妙な軋んだ音を立てて、柄にもなくちょっと気分が悪かった。
時間を見ると夜中の2時をちょっと過ぎたところだ。
丑三つ刻―――
嫌な時間だと思い、そのまま窓を閉めようとした俺の手が止まった。