KYOSUKE
さすがにその様子がまともに思えなかった俺は、思い切って声を掛けた。
お嬢を怖がらせないように、少し離れた場所から
「お嬢……」と遠慮がちに彼女を呼ぶ。
すると彼女は俺の声を耳に入れたのか、手を休めると僅かに顔を上げこちらを振り返った。
その白い顔はのっぺりと無表情で―――
だけど今にも泣き出しそうな曇った瞳の色をしていた。
「何を―――されてるんですか……」
俺は恐る恐る聞いた。
お嬢は俺の登場にさほど驚いた様子も見せずに、ちょっとまばたきをすると
「秘密を―――埋めようと思って…」
と抑揚のない声で答えてくれた。
お嬢のか細い声は風にさらわれそうにか弱いものだったけど、目だけは強い意思を湛えていて、それが逆に彼女が正常でないことを物語っていた。
「風邪引きます。中に入りましょう」
ゆっくりとお嬢の元へ歩いていくと、お嬢はまばたきをしながら俺を見上げてきた。
この間のような拒絶反応はないにせよ、俺を視界に入れてるのかどうかも怪しかった。
フリルをあしらった水玉模様のキャミソール一枚、そろいの短パン姿。
むきだしになった肩から茶色い髪がするりと落ちて、彼女はまばたきをすると―――
「埋めなきゃいけないの。秘密を。誰にも知られちゃならない
あたしの秘密を」
と呟いた。