KYOSUKE
お嬢の手元を見ると、掻き分けられた土が山になっていてその横に小さな溝が出来ている。
桜の木―――の下……
俺は顔を上げると、頭上に広がる桜の枝や葉を眺めた。
風に揺れて、葉の影が地面に奇妙な影を落としている。
「ねぇキョウスケ。桜が何でピンク色をしてるか知ってる?」
お嬢は軽やかに言った。
まるで幼い子供が絵本を読むように、楽しそうに。
その言葉は俺の聞いたことのないような幼い口調だったが、俺のことは認識しているようだ。
ぎくりとして顔を戻すと、お嬢は俺の方を見てなかった。
また土いじりを再会させている。
お嬢は俺の返事を待たずに土を掻き分けると、
「桜の下には死体が埋まってるからなんだよ。桜はその死体の血を吸ってるからピンク色なんだって」
軽やかに言う言葉に俺は笑えなかった。
お嬢は必死に土を掻き分け、掘り起こし……その中に何かを隠そうとしている。
だけど実際に俺は、埋まっている“秘密”を掘り起こそうとしているように見えた―――