KYOSUKE
ちょっとだけ土を掘って、俺はその手を止めた。
よそう。彼女が隠したがっている秘密を俺が不用意に覗くのはよくない。
俺が不自然に掘り下がった穴に土を被せようとしたとき………
掘り下がった土の中から灰色の先が尖った何かがちょっと覗いていた。
『暗い台所でお嬢は包丁を握って、その刃をじっと凝視していた』
マサさんの言葉がふっと頭を過ぎる。
俺はその尖った先をじっと見つめた。
ここに埋まる前は、さぞや切れ味の良かった包丁に違いない。
だけど今は錆び付いて、その鋭利な刃物の影もなかった。
俺はまばたきをすると、その上にそっと土を被せた。
「さよなら。雪斗さん」
ほとんど聞こえない小さな声で呟くと、俺はその場で手を合わせた。