KYOSUKE
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寝起きは最悪だった。
お嬢はちゃんと眠れただろうか。また怖い夢を見て魘されなかっただろうか。
そんなことばかり考えていたので、熟睡なんて出来なかった。
明け方まで目を閉じては、嫌な夢を見て起きる。ということを繰り返し、朝日が昇る頃、俺はとうとう眠ることを諦めた。
台所に行くと、疲れたような表情でマサさんがテーブルでコーヒーを飲んでいた。
「おぅ。おめぇも眠れなかったのか?」
とちょっと苦笑を俺に投げかけてきた。
「ええ……まぁ」
曖昧に答えて、俺は冷蔵庫の中を開けた。ミネラルウォーターを取り出して、コップに注ぎ入れるのをじっとマサさんが見ている。
怪訝そうに振り返ると、マサさんがちょっと目を細めならがら、
「おめぇさ……昨日も思ったんだけど…もしかしてお嬢のこと……」
言いにくそうに言葉を搾り出した。
俺はコップをテーブルに置くと、冷静な顔つきで口を開いた。
こんなとき…自分の表情の乏しさに助けられるなんて思いも寄らなかったな…
「妹に……似てるんですよ。歳も同じだし」
俺は小さな嘘をついた。
鞠菜とお嬢は全然似ていない。外見も、中身も―――
マサさんはちょっとびっくりしたように目を開いて、
「なんでぃ。お前妹いたんかよ」と言って、だけどそれで納得がいった様に、
「まぁお嬢としてもお前のこと兄貴みたいに思ってるふしがあるからな。これからも可愛がってやってくれ」
と、一言言って台所を出て行った。