KYOSUKE

制服の上からでも分かる。


戒さんの心臓の音……凄い。


一生懸命なのが無性に可愛くて、俺は彼の柔らかい栗色の髪をそっと撫でた。


よしよし…


何だか本当に手の掛かる弟を持ったみたいだ。


「響輔~」


戒さんは俺にしがみつくと、震える声で俺を呼んだ。


「ほんまにすまなんだ」



俺たちの長いようで短い喧嘩はこれで終止符を打つことになった。






―――

――


その後もそれなりに喧嘩はした。


だけどそれ以上に俺たちは仲が良かった。


街へ行くと、双子に間違われることもあった。


俺は戒さんと離れたくなくて、戒さんもきっと同じ気持ちで居てくれたに違いない。


だから高校受験も近くの公立に決めた。


担任からは、散々「鷹雄、お前ならもっといいレベルを狙える筈や!!受けるだけ受けてみぃ!!」なんて泣きつかれた。


自慢じゃないが、成績だけは良かったのだ。


戒さんと違って、俺は目立たない生徒だったし、故授業態度も真面目。


絵に描いたような優等生だったわけだが、別になりたくてなったわけじゃない。


ただ、無口で愛想がない俺を、単に教師が扱いやすかっただけに過ぎない。


だから地元の公立高校を受けることは、唯一の俺の反抗だったかもしれない。




そんなわけで、担任の懇願も無視し、俺は第一希望の高校にトップで入学することができた。






< 21 / 257 >

この作品をシェア

pagetop