KYOSUKE
制服の上からでも分かる。
戒さんの心臓の音……凄い。
一生懸命なのが無性に可愛くて、俺は彼の柔らかい栗色の髪をそっと撫でた。
よしよし…
何だか本当に手の掛かる弟を持ったみたいだ。
「響輔~」
戒さんは俺にしがみつくと、震える声で俺を呼んだ。
「ほんまにすまなんだ」
俺たちの長いようで短い喧嘩はこれで終止符を打つことになった。
―――
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その後もそれなりに喧嘩はした。
だけどそれ以上に俺たちは仲が良かった。
街へ行くと、双子に間違われることもあった。
俺は戒さんと離れたくなくて、戒さんもきっと同じ気持ちで居てくれたに違いない。
だから高校受験も近くの公立に決めた。
担任からは、散々「鷹雄、お前ならもっといいレベルを狙える筈や!!受けるだけ受けてみぃ!!」なんて泣きつかれた。
自慢じゃないが、成績だけは良かったのだ。
戒さんと違って、俺は目立たない生徒だったし、故授業態度も真面目。
絵に描いたような優等生だったわけだが、別になりたくてなったわけじゃない。
ただ、無口で愛想がない俺を、単に教師が扱いやすかっただけに過ぎない。
だから地元の公立高校を受けることは、唯一の俺の反抗だったかもしれない。
そんなわけで、担任の懇願も無視し、俺は第一希望の高校にトップで入学することができた。