KYOSUKE


「寝ぼけて土弄りしたんじゃないですか?」


「そういや小さい頃お嬢は泥団子つくるのが好きだったよなぁ。俺なんて無理やり食わされそうになったぜ」


と、安堵しながら組員の人たちがバラバラに散っていく。


俺はその場に残って、まだ手のひらを凝視しているお嬢に恐る恐る問いかけた。


「あの……お嬢……もしかして、昨夜のこと覚えてません?」


「昨夜?あたし何かしたの??もしかして夢遊病!?」


お嬢が目を丸めて俺の肩を掴んだ。


もしかして…覚えてない??


俺は本当に存在感がないのかも……


でも


「いえ……覚えていないのなら…」俺は曖昧に頷いた。


覚えていないのか。じゃぁあの奇行はチョコに入っていたブランデーのせい?





それならそれでいい。




あんな辛いことは無理に思い出す必要がないんだ。


お嬢にとって“罪の告白”は俺の胸の中に一生閉じ込めて、一生離さないでいよう。




「そー言えばさぁ、変な夢見たんだよね。お前が出てくる夢」


「変な夢?俺が…」


ぎくりとして俺は目をみはったが、


お嬢は恥ずかしそうにちょっと笑うと、


「何か~嫌がるお前をあたしが無理やり襲ってる夢。ってかあたし変態かっ!」


顔を赤くして、お嬢はバタバタと廊下を走っていった。


いや……襲われてはいません。





でも……


お嬢になら襲われてもいいかも。


じゃなくて!



俺は夢の中でも彼女の視界に入れたことに、ちょっと心を弾ませた。






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