KYOSUKE


――――

――


それから数日。


夏休みも終わろうとしていた、夜だった。


お嬢はこの日も友達と遊びに行くと出かけていった。


夜も8時。


とっぷりと暗くなった頃から、お嬢が居ないことをいいことに、組の人たちは派手に宴会をはじめた。


人使いの荒い組の人たちに、


「おいっ、キョウスケ!氷ねぇぞ」


「キョウスケ。こっちもビール」


「キョウスケ、するめどこいった?」


とさんざん引っ張りまわされて、タクさんに


「キョウスケ、ウーロンハイ持ってこい」と言われ、台所で用意してるところにお嬢が現われた。


白いコットンの短いスカートに淡いレモンイエローのカットソー。外出着姿だったから、帰ってきたばかりなのだろう。


「あれ?お嬢、早いですね」


「そっか~?別に普通だし」お嬢は台所の洗い場で手を洗うと、律儀にうがいをした。


こうゆう特殊な環境で育った割りに、お嬢はちょっと古風な……いや、しっかりした考えの持ち主だ。


9時を過ぎて帰ってくることは滅多にないし、もちろん無断外泊もない。


9時を過ぎるときは必ず連絡をくれる。


『だってあんまり遅いと組の奴らが心配するし』


なんて以前、言ってたっけ。






同じ歳の鞠菜なんて門限破りはしょっちゅうで、よく母親と喧嘩してたな……


そんなことをふと思い出す。








< 214 / 257 >

この作品をシェア

pagetop