KYOSUKE
「ふ~あちぃ。あ、ウーロン茶!貰うぜっ!!」
回想にふけっていたから、ぼんやりとしていた。
お嬢が何を指してウーロン茶と言ったのか気づいたのは、彼女が豪快にそのウーロンハイを一気飲みしているときだった。
「お、お嬢!それはっ!」
と言い終わらないうちに、
「はぁ~うまかったぁ♪」
と空になったグラスを俺の持っていた盆に戻す。
「?でもこれ変な味じゃなかった??」
時すでに遅し……
「…あの…お嬢……これは…」
ウーロン茶じゃなく、ウーロンハイで…と言いかけようとしたとき、お嬢は「んじゃあたしは部屋に帰るね~」と爽やかに笑顔を振りまいて、台所を出て行ってしまった。
空っぽになったグラスをしばらくの間凝視して固まっていたが、
やがて弾かれたように、俺は彼女のあとを追った。
一階の廊下の奥……
そこがお嬢のお部屋だ。
他の部屋襖なのに対して、お嬢のお部屋だけ茶色いしっかりしたドアだ。
ちゃんと鍵もかかるらしく、ドアノブに鍵穴がある。
男ばかりの大所帯だから、女の子一人…安心して眠れるように会長が付け替えたらしい。
それはこの間の夜、マサさんの部屋でビールを飲んで彼女の過去を聞かせてくれたときに聞いた。
「……お嬢…」
俺はそのドアを遠慮がちに小さくノックした。