KYOSUKE
断言しておこう。
俺は決してヤラシイ目つきでお嬢の胸元を見たわけではない。
だけど俺は目を見開いて“そこ”から目が離せなかった。
ちょうど心臓の上あたり……
トライバルデザインでだいぶ崩してはあるが、
それは確かに龍の形をしていた。
独特のカーブを描くトライバル模様の龍の頭部は、和彫りとは違った迫力があった。
以前お嬢が自慢げに言っていた。
『叔父貴の背中にはそれは立派な昇り龍の彫り紋があるんだぜ~』
会長の背中を見たことがないけれど、たぶんそこに描かれているのは一匹。
『あの女が黄龍の―――片割れや』
またも戒さんの言葉を思い出す。
だけど今度こそ俺は、その仮定を覆すことができなかった。
伝説の黄龍―――
日本の極道会のトップに立ち、構成員全てを統べる者。
その姿は、美しく気高く―――孤高の龍