KYOSUKE
もちろんあの夜の出来事をお嬢は覚えていなかった。
次の日に、「頭が痛い。風邪か?」とぼやいていた彼女に、
「お嬢は風邪なんて引きませんよ」と返すと、
「なんでぃ!あたしはバカだっていいたいんかい!はっ!そーいやもうすぐ試験だ!!」
と慌しく試験勉強をはじめてたっけ。
新学期が明け―――お嬢も俺もそれぞれ学校がはじまり、彼女は悪戦苦闘しながらも試験を何とかやり過ごし、俺は相変わらず課題に追われる毎日。
平穏で変わりない日常が過ぎてあっという間に10月に入った。
そんなある日のことだった。
「おぅ。キョウスケ。おめぇに荷物が届いてるぜ~。アメリカからの国際便だぜ」
とタクさんが小包を俺に手渡してくれた。
住所はここになっているけれど、送り主の住所はアメリカのニューヨーク。
「From Jennyって、女!?パツキン女か!?こいついつの間に!」
とタクさんは勢い込んでいたが俺は苦笑い。
俺に金髪の彼女なんていません。ついでに言うといたこともありません。
「おい!紹介しろよっ!」と煩いタクさんを残して、俺は小包を抱えて部屋に引っ込んだ。
送り主が誰だか俺には分かってる。
「ジェニーなんて女の名前で送るやなんて、あの人しかおらへんな」
梱包されたガムテープをはがして中を開けると、俺は一瞬止まった。
中に入っていたのはDVDで、一番上に乗っていたパッケージは色鮮やかなデザインの
アダルトDVDだった。
“寂しい響ちゃんに♪俺からのささやかなプレゼントやで♪19歳おめでと~”
小さなカードが入っていて、そこに書かれた戒さんからのメッセージを見て
俺はメッセージカードをぐしゃりと潰した。
「あのくそガキゃ。いてまうぞ」