KYOSUKE
「ところで…何で急に連絡してきたん?」
俺は襖の方をちょっと伺いながら声を潜めた。
立ち聞きなんて無粋な真似をする人は居ないだろうけど、どこで耳に入るか分からない。
『何でって、あんた今日がどんな日か忘れたん?』
そう言われて俺はまばたきをした。
今日……何かあったっけ??
『あんたの誕生日やないの』
母さんは焦れたように、呆れたようにため息の混じった声で答えた。
「ああ……」
『あんたはほんまどっか抜けとるわねぇ』
苦笑混じりの声を聞いて、俺も思わず口元を緩めた。
「親父そっくり?」
『お父さんはそんな抜けとらへん。お母さんとの結婚記念日にはいっつもきれいなお花くれるんよ』
あっそ…
母親のノロケ話聞かされた息子はどう対応していいものか、思わず口を噤む。
『19歳おめでとう。あんたがどこにおろうと、何をしようと私の息子であることは変わりないからね』
己の信じる道信じて、まっすぐに進みぃ。
最後に聞いた言葉は、俺に対するプレゼントだった。
龍崎組に行くことを母は最後の最後まで許してくれなかったけれど、これが俺に対する愛情だと受け取っていいかな。
「ありがとう」
俺は笑顔で返した。