KYOSUKE
鞠菜………
『…ちょっと鞠菜。もぉええでしょ。お兄ちゃん困ってるやろ』
と言って母親が強引に電話を奪う気配があった。
電話口に出ると、母親は声のトーンを落としてぼそぼそっと喋った。
『鞠菜な、ようやく兄離れできそうやわ。あの子あんたが東京行くって決めたときからずっと機嫌悪うてな』
え……そーだっけ…?
『あの子も相当なブラコンやったから、一安心やわ』
「ブラコンて、俺より戒さんに懐いてたやん。どっちかって言うとあいつ俺を邪険にしとらんかった?」
アクマリナのせいで、俺がどれだけ酷い目に遭ったか……
『戒くんも、あの子のお兄ちゃんみたいやったやない。でもほんまのお兄ちゃんと結婚するわけにはいかんやろ?』
「はは…」
俺は思わず苦笑を漏らした。
『鞠菜の彼氏は、まぁ常識のある子やから安心しとるわ。優しそうやし。妬ける??』
まさか
どっちかっと言うと、ようやく安心した。ってところだな。
のしつけて送ります。
ブラコン説にはいまいち信憑性がないが、俺はそれに対して何も答えなかった。
『そないなわけで、いつでも帰ってきぃ。鞠菜も待ってるさかい』
「うん」
『ほな、元気で』
ほな
そう返して、東京に来てはじめて母親の大切さに気付いた。
鬱陶しいって思ったときもあるけれど、今は無性に会いたいな。