KYOSUKE


それから月日はあっという間に流れ、寒い冬がやってきた。


この冬、クリスマスには組のみんなでクリスマスパーティーをやって、プレゼント交換なんてのもやった。


俺はお嬢が用意したトナカイのぬいぐるみが当たり、


俺にとって「大当たり!」を引いたわけだ。


丸い体につぶらな黒い目。小さな角が生えた、いかにもお嬢が好きそうなぬいぐるみ。


組の人たちにとって「大はずれ!」らしいが。俺はトナカイもマグカップも大事にしている。


正月も故郷がない人たちにとって龍崎組こそがふるさとで、ほとんど誰かが抜けることはなかった。


元旦には会長がおせち料理を食べにきて、新年の挨拶に来たけれど、特にトラブルもなく相変わらずその日はみんな緊張度マックスだ。


そのとき会長が連れてきたのが、鴇田組の組長で、二人揃うとなんとも言えない迫力があった。


お嬢はこの鴇田組長のことを嫌っているみたいで、


「陰険蛇田が来た」と顔を歪ませていた。


ほとんど喋らない鴇田組長に、龍崎組の人たちもどう接していいのか分からず、あたふたとしている。


俺は会長よりとっつきやすい人だと思ったけど…


何故なら喋らなくていいから。


つまりは楽だってことだ。


会長だけじゃなくて良かった。正月からあの独特のテンションにはついていけないよ。





ところが……


お正月用のお神酒を飲んで、会長はごきげん。


「キョウスケ。風呂入りにいくぞ!」なんて言いだして、俺はびっくりした。





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