KYOSUKE


「これは若さ故の反抗心から―――」


なんて言うと、会長は豪快に笑った。


笑い声が風呂場に響いてエコーがかかった。


「やっぱおめぇ面白いぜ」なんて言いながらも腹を抱えている。


俺はちっとも―――面白くない。びっくりしながらも、身を引くと、


「気にするな。この人はこうゆう人だ」と冷静な声で鴇田さんが答えた。


そうゆう鴇田さんも―――かなり立派な鴇の紋を背負っている。


紅いくちばしがなんとも美しく、白い大きな羽は迫力がある。


背中に彫られた紋は―――一族の力を象徴するもの。


名を背負い、血を受け継ぎ、力を―――誇示するもの。


俺たち極道が背中に紋を背負うのはそれなりの覚悟とそれぞれの道筋を描いている。


会長の背中の龍は―――想像したとおり、やっぱり一匹だった。


迫力を湛えた龍は、和彫りの刺青で、雄雄しく口を開いた顔のアップがあり、その下に長々と続く胴体がくねくねと美しいカーブを描いていた。


その所々に淡いピンク色をした桜の花が散っている。





美しい青龍の紋―――




猛々しく、美しさを湛えたその龍の目は




どこかしら寂しそうだった。



そう見えるのは俺だけだろうか。




会長の背中の龍は―――




つがいになるもう一匹の龍を―――



探しているように




見えた。








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