KYOSUKE
そんな変わりない日常の午後。
この日はめずらしく大学も午前中で終わり、バイトも入れてなかった。
たまった疲労に、寝ることを決め込んでいた俺は早々にアパートへ帰った。
古い年代を思わせる鉄の階段を昇って、俺は固まった。
「よぉ」
部屋の前に―――戒さんが座っていた。
「か、戒さん―――!?」
「何や、幽霊に会おうたような顔して」
戒さんは昔とちっとも変わらない人懐っこい笑顔で、ひらひらと手を振っている。
「ど、どないしはったんです?学校は―――?」
「辞めた」戒さんはまるで習い事を辞めるかのように、簡単に言ってのけた。
「は!?」
「冗談決まってるやろ。お前に会いにきたんや」
にかっと白い歯を出して笑うと、戒さんは出し抜けに俺に抱きついてきた。
「会いたかったで。
響輔―――」