KYOSUKE
河野さんは案の定、戒さんを見るとびっくりしたように目を丸めた。
「ごめん、鷹雄くん。お客さん来てたみたいだね」
申し訳なさそうに眉を寄せる。
彼女は俺が独り暮らしをしていることを知っている。
「はじめまして♪響ちゃんの弟ですぅ」
戒さんは2トーンも声をあげ、よそ行きの声を出してニコニコ。傍から見てると天使みたいだ。
河野さんも、その無邪気な笑顔に一瞬頬を赤らめていた。
でも、弟て……
「鷹雄くん弟居たの?妹さんだけじゃなく?」
「えっと…弟じゃなく。正確には弟みたいな幼馴染」
河野さんの背後で戒さんがにやりと不敵に笑った。
何か……いやな笑顔だな。
「俺お邪魔虫みたいやし、ちょっと席外すわ」
戒さんは聞き分けの良い子供のような態度を振舞って、さっと立ち上がった。
「響ちゃんの彼女さん、ごゆっくりぃ♪」
にこにこ言って戒さんが玄関口に向かう。
河野さんは顔を赤らめて、俯いた。
ってか、彼女じゃないし…
「ちょぉ戒さん…」
俺は戒さんを追って玄関まで急いだ。