KYOSUKE
「お前もやるやないか」
玄関の扉を開けながら、戒さんは俺に耳打ちしてきた。
「だから彼女やないですって」
「せやかてあの人お前のこと絶対好きやで?相変わらずモテモテやなぁ」
にしし、と白い歯を見せて戒さんは笑う。
「俺のことは気にせんといて。あんじょうしぃや」
意味深に笑うと、戒さんはさっと部屋を出て行ってしまった。
…………
あとに残された俺は呆然と彼の出て行った扉を見つめるしかなかった。
「コーヒーでええかな?インスタントやけど」
俺が狭いキッチンに立って、インスタントコーヒーの瓶の蓋を開けてると、河野さんはきちんと正座したまま俺を見上げてちょっと笑った。
「おかまいなく。あたし知らなかった。鷹雄くん、関西の人だったんだね」
「へ?」
「関西弁喋ってるところ初めて聞いたから」
「…あ、ああ…」
いつもは…標準語を使うように心がけている。意味はないけど、何となく…
ただ俺も動揺してたんだな。
故郷の言葉が自然に口をついていた。
「関西弁、可愛いね♪」
河野さんがふわふわと笑う。彼女のこうゆう柔らかい笑顔は結構好きだった。
「おおきに」
俺もちょっと笑った。