KYOSUKE
「ええて言うてるやないか!下がれや!!」
と怒鳴った。
俺の剣幕に、道行く通行人たちも何事か足を止め、それでも俺と目が合うとそそくさと足を進める。
びっくりして目を見開いている女の向こう側に戒さんが、まるで射るような冷たい視線でこっちを見ていた。
ドキリとする、険しい視線。だけど口元にはほんの僅か笑みを湛えている。
「なんや。お前が機嫌悪いやなんてごっつぅ珍しいな」
戒さんはガードレールからぱっと離れると、
ジーンズのポケットに入れいてた手を出しながら、こちらに向かってくる。
「悪いな。こいつご機嫌ナナメやさかい、ここで堪忍」
戒さんは俺の肩に腕を回すと、女たちの方ににこにこ笑顔を向けた。
「ほな♪いこか」
そして俺にもにっこり笑うと、先を促した。女たちは呆然と立ちすくみ、目だけで俺たちを見送っている。
「ち、ちょっと……」
歩き出した俺たちの背後から一人の女の声が追いかけてきた。
「あんたら何?ちょっと甘い顔したら、いい気になってるみたいだけど。ちょっと若いからって何でも許されると思ったら大間違いだよ!?」
女の声は棘だらけだ。振られるとは思ってなかったのだろう。
俺はどうやら彼女たちのプライドを傷つけてしまったようだ。
戒さんは足を止めると、やれやれと言った感じで肩を竦めた。