KYOSUKE
「なんや。久しぶりにやろ言うのか??俺は強いで♪」
戒さんは胸の前で拳を構える。
「ちゃいます」
何でこの人は…すぐに喧嘩したがるんだろう…俺は平和主義者や、言うのに。
「俺も…俺も同じこと考えてたから」
シャツを腕から抜き取ると、俺はゆっくりと戒さんに背中を向けた。
「おまっ…これ!」
戒さんも、俺の背中に描かれた鷹の紋見て、一瞬言葉を失った。
俺は照れ隠しに、ちょっと首を捩ると、
「かっこええでしょ?戒さんのよりずっと」とわざとふざけて言った。
「阿呆。俺の方がかっこええに決まっとるやないか!」
戒さんは、ふんと鼻を鳴らすと胸の前で腕を組んだ。
「俺の方が絶対かっこええですって」
「俺の方や!」
言い合いはしばらく続いたが、どちらからともなく吹き出した。
こんな低レベルな言い合いしたのなんて、久しぶりだった。
それまでもやもやとくすぶっていた俺の心は、霧が晴れたみたいにすっきりと晴れ渡った。
「せやかて、俺の考えは戒さんと同レベルやったなんて…」
「それを言うのなら、俺の方や。お前と同じことしとったなんて恥ずかしいわ」
憎まれ口を叩くも、顔は笑顔だった。
「ま、何をするにもやっぱり俺たちは考えることが一緒なんですね」
考えることが一緒。
このときは単にそれが嬉しかった。
だけど俺はまだ気付いていなかった。
この先、出逢い、導かれ、やがては大切にしたいと想う宝物も―――俺たちは一緒だったということを。
脱衣籠の上に置かれた龍崎 朔羅の微笑みが、俺たちふたりを見守っているようだった。