KYOSUKE
俺は横を向けていた体を正面に向け、天井を仰いだ。
「せやかて、俺が止めても戒さんは行かはるんでしょ?」
ため息混じりに言うと、戒さんは「いしし」と笑った。
「俺の性格よぅ判っとるやないか」
俺は首だけを捻り、戒さんの方を見た。
「何年付き合うてる思ってはるんですか?」
戒さんは声を出さずにちょっと笑った。暗闇の中にちらりと笑顔が浮かぶ。
少年のような屈託のない、太陽みたいな明るい笑顔だった。
「あの写真の…龍崎 朔羅が、戒さんの探し求めとった人でしょう?」
戒さんはちょっと得意げに笑うと、鼻を鳴らした。
「そや。あの女が黄龍の―――片割れや」
俺はちょっと面食らって、戒さんの得意げな横顔を見つめた。
戒さんは口の端を吊り上げて、俺の方に顔を向ける。
「冗談だと思うとるやろ?あないな女子高生が?ってな感じで」
「それもそうですが、黄龍自体伝説の話やないんですか?それに片割れて、まるで二人居るみたいな物言い……」
戒さんは俺の方に体を向けると、マットレスにちょっと肘を突いた。
俺を覗き込むように、上から見下ろす。
「単なるたとえ話や。そうやったら面白いな、って言うこと」
戒さんはほんのちょっと笑った。