KYOSUKE
たとえ話……
俺にはそう思えなかった。
もちろん黄龍が存在することも、たとえ存在しても二人居ることも、それは一人歩きした噂に過ぎない。
だが戒さんは、その噂……を信じている。
「意外やな。戒さんて、そんな想像力ありました?小説家になった方がええんやないですか?」
「アホぬかせぇ!俺は極道や!!」
そんな胸張って言えることでも……
伝説の黄龍―――
その姿は、美しく気高く―――孤高の龍、だと誰かが言った。
もしそうだとしたら、見てみたいな。
黄龍を―――
覗き込まれたまま視線だけが空中でばっちり合った。
すぐ至近距離に戒さんの整った顔がある。
戒さんはほんの少し唇に笑みを湛え、ゆっくりと顔を退けようとした。
俺から遠ざかっていくそのきれいな顔を、俺は両手で挟みこんだ。
両頬を包まれて、戒さんは訝しそうに目を細めた。
「なんや?」
「戒さんが青龍行く言うんなら、俺は戒さんの手助けをします。
俺も青龍行きます」
「は………?なんやて??」
紅茶色のきれいなビー玉みたいな目を開いて、戒さんは俺をまっすぐに見下ろした。
淡い水晶体に俺の意思を固めた表情が映っていた。