KYOSUKE


たとえ話……


俺にはそう思えなかった。


もちろん黄龍が存在することも、たとえ存在しても二人居ることも、それは一人歩きした噂に過ぎない。


だが戒さんは、その噂……を信じている。


「意外やな。戒さんて、そんな想像力ありました?小説家になった方がええんやないですか?」


「アホぬかせぇ!俺は極道や!!」


そんな胸張って言えることでも……






伝説の黄龍―――




その姿は、美しく気高く―――孤高の龍、だと誰かが言った。


もしそうだとしたら、見てみたいな。


黄龍を―――







覗き込まれたまま視線だけが空中でばっちり合った。


すぐ至近距離に戒さんの整った顔がある。


戒さんはほんの少し唇に笑みを湛え、ゆっくりと顔を退けようとした。


俺から遠ざかっていくそのきれいな顔を、俺は両手で挟みこんだ。


両頬を包まれて、戒さんは訝しそうに目を細めた。


「なんや?」





「戒さんが青龍行く言うんなら、俺は戒さんの手助けをします。



俺も青龍行きます」







「は………?なんやて??」


紅茶色のきれいなビー玉みたいな目を開いて、戒さんは俺をまっすぐに見下ろした。


淡い水晶体に俺の意思を固めた表情が映っていた。







< 53 / 257 >

この作品をシェア

pagetop