KYOSUKE
戒さんはふっと笑みを漏らした。
「かっこええな。惚れそうになるわ」
「堪忍してください。俺にはそっちの趣味あらへん」
戒さんの冗談に、妙にシリアスになっていた俺の心がほんのちょっと緩んだ。
「かっこええこと言うたけど、ほんまはちょっとナーバスになっとったんです」
俺は頭の下で腕を組んだ。
腕を動かす際、戒さんの腕に触れた。熱を持った温かい体温だった。
俺は首を動かして再び戒さんを見た。
戒さんは穏やかな微笑みを浮かべ、俺の次の言葉を待っていた。
「ほんまのこと言うと、河野さんに告白されたんです」
「そうやろうな~。ま、お前が断ったってこと薄々勘付いとったけど」
「ちゃいます。断られたのは俺の方や」
「何でやねん。告白してきたの、向こうやろ?」
怪訝そうに戒さんは眉をひそめた。
数時間前―――
「じゃぁさ。あたしと付き合わない?あたし鷹雄くんのこともっと知りたい」
河野さんの言葉を聞いて、俺はどうするべきか考えた。
いや、正確にはどうやって断ろうかと考えていた。
俺は今誰とも付き合う気がないし、恋愛にかまけてる余裕なんてない。
ぬるくなったコーヒーを一飲みして、目の前の河野さんを見る。