KYOSUKE
俺は立ち上がった。そして着ていたシャツのボタンをおもむろに外し出す。
もちろん明りはつけたまま。
「えっ!ちょっと鷹雄くん!!?」
河野さんは真っ赤になって、腰を引いた。
「えっと…そりゃ鷹雄くんのこと好きだって言ったけど、そんなの早すぎじゃない!?こう見えてもあたし身持ち固いんだよ?」
見れば分かる。
遊んでるか、そうでないかぐらい。
河野さんは明らかに後者だ。
「黙っててや」
俺は河野さんを制すると、シャツを腕から抜き取った。
それほどきつく言ったわけではないけど、河野さんは押し黙った。
頬を真っ赤にして、唇を噛んでいる。
真正面から俺の体をちらりと視界に入れると、
「………意外。細いと思ってたけど、結構鍛えてるんだね…」
そう言うと、さらに顔を赤く染め上げて、顔をぱっと逸らす。
屈みこむと、河野さんの顎を持ち上げて、真正面から覗き込んだ。
「ちゃんと見てや」
その一言に、河野さんは顔から湯気が出そうなほど頬を上気させた。
コクンと小さく頷いたのを確認して、俺はゆっくりと彼女に背を向けた。
鷹の紋がしっかりと目に入るよう。
明りの下で―――彼女に背を向けたんだ。
それは彼女の気持ちに背を向けるのと同じことだった。