KYOSUKE
お嬢は俺を他の組員と同じ扱いをする。
特別冷たいわけでもなければ、特別優しいわけでもない。
まるで最初から居た家族の一員のように接してくれる。
組員も同じ。俺を弟のように扱ってくれた。
部屋も一室与えられ、食事を作る以外の家事は当番製。
食事は驚くことに毎日お嬢が作っているということだった。
最初に出てきた味噌汁もお嬢のお手製だったらしい。
「一汁三菜!一日30品目!!これは食事の基礎!!」
なんて言いながら、和洋中、毎日たくさんの献立を考えるお嬢。
そう言えば二日として同じメニューが出てこないな。
しかもすごく美味しいし。
鞠菜なんて、母さんの手伝いさえ嫌がるってのに、お嬢はすごいな。
聞いたら、早くにお母さんを亡くしたので料理は小さい頃からやっている、とのことだ。
毎日色とりどりで栄養を考えられた食事に感心して、俺は日記をつけることにした。
日記って普通一日の出来事を書くものだけど、俺の興味はもっぱら食事。
戒さんと違って、俺はそんなに食う方じゃないけど、どれもうまいから。
ある日の日記。
おひたし(ほうれん草)
じょうやなべ(常夜鍋:豚肉、小松菜を中心
にした鍋料理。しゃぶしゃぶみた
いなもの)
うめとおからのコロッケ
がんものと大根の煮物
すのもの(長芋とオクラ)
きういと生姜のゼリー
んん――――??
書き終わって、俺は目を開いた。
箇条書きの献立の頭文字を取ると……
「おじょうがすき」
口に出して、俺は慌てて口を覆った。
そんな―――
まさか………
ただの偶然だ。