KYOSUKE

頭から熱いシャワーを浴び、大きな檜の湯船に浸かると体の芯から温まってきた。


入浴剤が入れてあるのだろう。お湯が乳白色だ。


俺はお湯を両手で掬った。その表面にゆらゆらと母親と、3歳年の離れた妹の鞠菜(マリナ)の顔が浮かび上がる。



『あかん!龍崎組に行くやなんて、うちは許しません』

『そうだよ!お兄ちゃん。何考えてるの!?』



三ヶ月前に上京してきた母と、鞠菜は揃って口を開いた。




『何で突然龍崎組に行こ、思うたの?』


鞠菜が不審そうに俺を見る。


妹はたしか龍崎組のお嬢と同じ歳だ。写真で見た龍崎 朔羅より華はないけど、それでも兄の贔屓目から見て、鞠菜は可愛い部類に入ると思う。


『盃の件で?鈴音姐さん(スズネネエサン)に言われたん?』


母が視線を険しくして、俺を睨む。


鷹雄は虎間の直参なので、そう言った情報が早い。


鈴音姐さんとは虎間組長のご内儀で、戒さんの母親だ。


『虎間の姐さんは何も言うてないよ』


『ほな、戒くん!』


鞠菜も母と同じように俺を睨んだ。ただ彼女は母とは違う種類の険悪な光りを瞳に宿らせている。


鞠菜がこんな風に俺を睨んでくるのは初めてのことだった。


理由は分かってる。


『戒さんも何も言うてない』


本当のことだ。俺はただ、彼に龍崎 朔羅の話を聞いただけ。





『嘘や!お兄ちゃんは戒くんのために龍崎組に行くんやろ!?お兄ちゃん分かってるん!





戒くんはあたしとの縁談断って、その女と結婚したがってるんやで!!』











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