KYOSUKE
タバコに火をつけながらケータイで電話を掛ける。
日本では23時。戒さんの居るアメリカでは朝の9時だ。
朝に弱い戒さんでもさすがにこの時間なら起きてるだろう。
そう思って掛けた。
『……よぉ』
電話口に出た声は変わらなく不機嫌そうで、俺はそれにちょっと安心した。
『珍しいな。どないした?』
「ええ。ちょっと声を…聞きたいな、思いまして」
『気色悪いこと言うんじゃねぇよ』
電話の向こうで戒さんが顔を歪めているのが分かった。
俺はちょっと笑った。それと同時に灰色の煙が口から吐き出される。
『何かあったのか?』
「“黄龍”に―――龍崎 琢磨に会いましたよ」
俺の言葉に戒さんは別段驚くことなく、
『ふぅん』と返してきた。
驚かないところから、彼も予想していたことだろうと考えた。
「戒さん。強力なライバル登場ですよ」
『ライバル?』と戒さんの声が一段と低まった。
「お嬢は―――……」
言いかけたところで、俺の背後で改造したバイクマフラーの音が響いた。