KYOSUKE


タバコに火をつけながらケータイで電話を掛ける。


日本では23時。戒さんの居るアメリカでは朝の9時だ。


朝に弱い戒さんでもさすがにこの時間なら起きてるだろう。


そう思って掛けた。


『……よぉ』


電話口に出た声は変わらなく不機嫌そうで、俺はそれにちょっと安心した。


『珍しいな。どないした?』


「ええ。ちょっと声を…聞きたいな、思いまして」


『気色悪いこと言うんじゃねぇよ』


電話の向こうで戒さんが顔を歪めているのが分かった。


俺はちょっと笑った。それと同時に灰色の煙が口から吐き出される。


『何かあったのか?』






「“黄龍”に―――龍崎 琢磨に会いましたよ」





俺の言葉に戒さんは別段驚くことなく、


『ふぅん』と返してきた。


驚かないところから、彼も予想していたことだろうと考えた。


「戒さん。強力なライバル登場ですよ」


『ライバル?』と戒さんの声が一段と低まった。







「お嬢は―――……」






言いかけたところで、俺の背後で改造したバイクマフラーの音が響いた。








< 85 / 257 >

この作品をシェア

pagetop