KYOSUKE
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「ぉらぁっ!!」
最後の一人のパンチをかわして、そいつの鳩尾に強烈な回し蹴りを食らわすと、男はあっけなく地面に沈んだ。
五分もかからなかったな。
俺の足元にはみっともなくやられた男たちが、地面に転がっている。
バイクの後ろに跨っていた女たちはいつの間にか姿を消している。
逃げていったのだろうか。
その方がいい。若い女が、こんな輩とつるんでいるのは良くないことだ。
「なんや、口ほどにもないなぁ」
ストレス解消にもならん。
喧嘩をしたって、拳を振るったってこの言いようのない虚無感は増すばかりだ。
俺は冷めた目で、倒れた男のわき腹をつま先でつついた。
男はうめき声を僅かに上げただけだった。
「もっと骨のあるヤツとやりたいなぁ」
例えば、戒さんとか、
龍崎 琢磨―――……とか?
俺は座席のシートの上に置いたケータイを手に取った。
戒さんと電話を繋げたままだったことを思い出す。
「すんまへん。終わりました」
俺が詫びると、戒さんは豪快な欠伸を漏らしてちょっと掠れた声を出した。
『すっきりしたか?』
俺はため息を付いた。
「全然」
俺の返事に戒さんは喉の奥でくっと笑っただけだった。
そして声を低めると、
『ところでライバル出現てどないなことや?』と本題に入った。