KYOSUKE
『なにぃ!?朔羅が龍崎 琢磨を!?ホンマかっ』
ケータイを通してもビリビリと伝わってくる戒さんの怒気に、俺は思わずケータイを耳からちょっと離した。
「いや、そう思うただけですけど。ただの叔父と姪って関係にしては随分親密そうでしたよ」
『…………』
戒さんは何事か考えるように電話の向こうで沈黙した。
嫌な―――沈黙だった。
その奇妙な沈黙を押し破りたくて、俺は珍しく戒さんの返事より先回りして言った。
「せやかて、お嬢の一方的な片想いっぽいし、第一歳が離れてる。俺の思い過ごしかもしれへんし」
『そやなぁ。こりゃ急がなあかんな』
戒さんがちょっとため息を吐いて、それでも元来の明るい声で答えた。
俺は何故かその声に、ほっと安堵の息を漏らした。
「早く」
俺はケータイを握りしめて、ちょっと微笑んだ。
「早くこっちへ来てくださいね」
あなたの運命の人がここで待っている。
彼女の恋が成就する前に―――
彼女をさらってください。
そうすれば
俺の使命も終わり。
そうすれば
俺のこの気持ちにも終止符が打てる。
でも、もし戒さんが朔羅さんを泣かせることがあったら―――
そのときはたとえ戒さんであろうと、
俺は彼に拳を向けるだろう。