KYOSUKE
龍崎家に戻ったのは夜中の三時過ぎだった。
そろりと玄関の引き戸を開けると、お嬢が玄関のあがりがまちに仁王立ちになり、腕を組んでいた。
「ぅわ!」
俺は思わず声を漏らした。
「キョウスケ。随分遅い帰りだな」
ずぅうん。彼女の背後に効果音をつけるとしたらきっとこうだろうな。
それぐらい、迫力のあるオーラを纏っている。
「すみません」俺は素直に謝った。
正直お嬢が何に対して怒っているのか分からなかった。
俺、何かやらかしたか?
それともまさか…正体がバレた―――?
そんな尻尾を捕まれることなんてしてないと思うけど。
俺は探るようにお嬢を見上げたけれど、お嬢の黒い瞳から“不機嫌”以外の何の感情も探れなかった。
俺は大人しく靴を脱いで玄関に上がった。
それを睨みながらも見届けると、お嬢はいきなり俺の首根っこをむんずっと掴んだ。
「来い!」
有無を言わさぬ迫力に、俺は従うしかなかった。