KYOSUKE
「それによぉ、お前ひ弱そうだから。悪いヤツに絡まれてボコられでもしてたらって…」
お嬢はしんみりした様子で俺を見てきた。
絡まれて…
って言うのは当たってる。
だけどボコったのは俺の方で…
何て言えやしないな。
でも、そこまで俺のことを心配してくれてたんだ。
寝ずにずっと俺を待っててくれたんだ。
「すみませんでした。以後気をつけます」
俺はその優しさにじんと胸が打たれるのを覚え、素直に頭を下げた。
「おうよ。連絡しろよ」
お嬢は、ふんと鼻を鳴らした。
「ところでアヒルちゃんは一体誰が…」
と、またアヒルの話題に変わった。
すみません、それは俺じゃないです。
なんて思いながらふっとお嬢の足元を見やると、黒い何かがさっと横切った。
いつ見ても嫌悪感を感じるその物体…いや、生き物を凝視していると
「何見てンだよ」とお嬢が俺の視線の先に目を移した。
そしてその黒光りする虫を見ると、
「んぎぃやぁあああああああ!!!」
と壮絶な悲鳴を上げて、ちゃぶ台を乗り越えてきた。