KYOSUKE


こんなに可愛いものを戒さんに渡したくない。


こんなに愛おしいものを誰にも見せたくない。


俺の中で黒い考えが首をもたげる。


このまま、お嬢を俺のものにしたら―――?




『めっちゃ可愛いやろ?♪♪俺、運命感じちゃった♪』


『一目ぼれ言うの?俺の女神や!』






『俺は好きやで。お前のこと。


たとえお前が極道やないにしろ、俺の生涯の親友や。


俺は離れていかんからな』




めまぐるしく黒い考えと、正常な考えがいったり来たりする中で、俺の中に最後に鮮明に過ぎったのは戒さんの明るい声。





そう、俺がやろうとしてることはルール違反だ。


―――俺は、戒さんを裏切りたくない。






ぶっとびそうになる理性を何とか押さえると、


俺はお嬢をやんわりと引き剥がした。


「お嬢、もう居ないですよ。大丈夫です」


「ホントに??」


それでもまだ不安なのか、お嬢は俺の袖を掴んで背後に隠れるようにしてちゃぶ台の向こう側を覗き込んでいる。


「ホントだ。どっか行ったみたい」


ほっと安心したように、へなっと床に座りこんだ。






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