KYOSUKE
お嬢が落ち着くと彼女はのろのろと部屋に帰っていった。
俺への説教もそれで終了。
いろんなことがありすぎて、俺も何だか疲れて畳に座り込んでいた。
そこへマサさんとタクさんが現われた。
「おいっ、キョウスケっ」
声を潜めながら、こそこそと身を低めて二人が茶の間に入ってくる。
「どうしたんですか?こんな夜中に。まさかお嬢の悲鳴で起きちゃったとか?」
「いや。あれは俺らの仕業♪」
にやり、と笑ってタクさんがさっきお嬢の足元を這っていたゴキブリを手でつまみながら俺に見せて来た。
俺はその様子にぎょっと目を見開き、思わず後ずさりした。
だってゴキブリだよ!?俺だって素手では無理。
「ははっ!これはおもちゃだ。よく出来てるだろ?」
マサさんが笑い声を上げる。
「おもちゃ…」
うーん…よく見たら明らかに塗料だと思われる色むらが…
それでもあんまり凝視はできないけど。
「お嬢の説教は長いだろ?これを出したらどんなに怒ってても、逃げ出すからな」
タクさんがカラカラ笑う。
もしかして―――……
俺を助けてくれるために??
「まぁ門限破りなんて誰でも一回はすることだから気にするなよ。だけどお嬢はああ見えて心配性だからな。お前が憎くて怒ってるんじゃねぇぞ?」
マサさんが俺の肩をポンっと叩いた。