KYOSUKE
その晩、俺は久しぶりに戒さんに手紙を書いた。
“戒さん―――……
龍崎家の人は、みんな顔は怖いですけど、本当はすごく優しい人ばかり。
人情に厚いっていうのかな。
ホントにヤクザの言葉がぴったりだ。
それでも、俺はここに来て良かったです。
と、ここまでは美談なのですが、
「あ、そうそう。お嬢のアヒルを縮めちまったのは俺でよぉ。お前が怒られそうになったから、それはさすがにかわいそうかなって思って」
と、タクさんがカラカラと笑っていました。
前言撤回。
ここの人たちは
普通にヒドイ。
「タク、おめぇちゃんとお嬢に謝っておけよ。キョウスケのせいにされたらこいつが可哀想だろが」
と、優しいマサさん。
マサさんはここの兄貴分です。お嬢が居ないときに、みんなを仕切る役目を担っている。
俺のことも本当の弟のように接してくれる。”
そこまで書いて俺はペンを置いた。そして少し考えるように首を捻ると、
“そんな彼らを裏切って騙している俺は、時折心苦しくなります”と書こうと思ったけれど、
結局止めた。
次の日、その手紙をポストに投函すると、俺は青い空を眺めた。
この空は戒さんの元まで繋がっている―――