KYOSUKE
その日から二週間が過ぎた。
季節は夏真っ盛り。
俺もお嬢も夏休みに入って―――と言っても俺はバイトがあるから龍崎家にはあまり居ないけれど。
それでもいつもよりお嬢と長く一緒にときを過ごした。
茶の間でお嬢はよく夏休みの宿題をしている。
「なぁこれどうやって解くの?」なんて数式を組みのひとたちに見せると、みんなまるで殺虫剤を撒かれたときのゴキブリのごとくサーと居なくなる。
「キョウスケ。おめぇ分かる?公式教えて」
「いいですよ。これはですね…」
自然、俺はお嬢と二人きりで過ごすときが増えた。
俺の説明に、お嬢は難しそうに眉を寄せ、腕を組みながら「う~ん」と唸っている。
そんな彼女の横顔を見るのが
俺の小さな幸せ。
そんなある日のことだった。
夕方4時に龍崎家の貸金業のバイトを上がると、俺はいそいそと龍崎家に向かった。
今日は英語の宿題を見て欲しいと言われていた。
俺の足取りは軽くなる。
狭い路地裏を歩いていると、T字路の影から男が一人姿を現した。