はぐれ雲。
店内の大理石調の床はきれいに磨かれていて、顔が映るくらいだ。

亮二はそんな店の中央の白いソファーに腰を下ろす。

店長が。入り口で立ち止まっている博子の肩をそっと押した。

「どうぞ、こちらへ」

「お、おかまいなく!」

足がすくんでしまった。

亮二は知らん顔で携帯電話をチェックした後、ソファーからのけぞって飾られた服を眺めている。

「ちょっと、新明くん」

「さぁ、こちらへお入り下さい」

言われるがまま奥に連れてこられた博子は、着ていた服を脱がされた。

今になって我ながら冴えない服装だったと恥ずかしくなる。


店長は、何着かの服を持ってきていた。

手伝ってもらいながら、袖を通していく。

「あの、お代金なんですが…」

財布の中には、こんな高価な服を買えるほどのお金は入っていない。

博子は恥をしのんで聞くと、そんな不安を察してか店長はにっこり笑って答える。

「新明さまから、すでにいただいておりますので」

「え!でも」

「お客様、新明さまがお待ちですので」

店長は爪に赤いマニキュアを塗った手を博子の顔の前に出して、彼女の次の言葉を制した。

「もうその話は終わりにしましょう」と言わんばかりに、一歩的にその話を打ち切ってしまった。

その赤に、彼女の強い意志が表れているようで、博子は何も言えなかった。



「では次はこれにお召しかえください」

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