はぐれ雲。
いや、気が付いたら名前を呼んでいたというほうが正しいのかもしれない。
今しかない、そう思った。
ゆっくり立ち上がると、彼は言う。
「じゃあ、これから毎回葉山と雑巾がけするよ」
思わず出た言葉に彼は内心苦笑し、こんなことが言いたいんじゃないだろ、と自分を叱咤する。
「やだ、先輩。冗談ですよ。そんな真顔で…」
博子は真剣な達也を見て、声を出して笑った。
彼女は短めの黒髪を揺らしながら、本当におかしそうに笑う。
それがたまらなく心惹かれる。
「そんなにおかしい?」
「ええ、すごく」
「そっか…」
そう言ってうつむいた達也に、博子は「ごめんなさい」と口許を覆った。
「先輩には今年も優勝してもらわないと。だから、怪我をしないようにしてくださいね」
彼女は、そう言うと今度はニッコリ微笑む。
その笑顔を自分のものにしたい、達也の心は決まった。
「じゃあ、私、これ片付けちゃいますね」
そう言って彼女はバケツを持ち、背を向けた。
「葉山」
二人だけの道場に、達也の優しい声が響く。
「好きなんだ」
もう一度、達也は言った。
次はまるで自分に念を押すように。
「君のことが、好きなんだ」
遠くで野球部だろうか、掛け声が風にのってやってくる。
今しかない、そう思った。
ゆっくり立ち上がると、彼は言う。
「じゃあ、これから毎回葉山と雑巾がけするよ」
思わず出た言葉に彼は内心苦笑し、こんなことが言いたいんじゃないだろ、と自分を叱咤する。
「やだ、先輩。冗談ですよ。そんな真顔で…」
博子は真剣な達也を見て、声を出して笑った。
彼女は短めの黒髪を揺らしながら、本当におかしそうに笑う。
それがたまらなく心惹かれる。
「そんなにおかしい?」
「ええ、すごく」
「そっか…」
そう言ってうつむいた達也に、博子は「ごめんなさい」と口許を覆った。
「先輩には今年も優勝してもらわないと。だから、怪我をしないようにしてくださいね」
彼女は、そう言うと今度はニッコリ微笑む。
その笑顔を自分のものにしたい、達也の心は決まった。
「じゃあ、私、これ片付けちゃいますね」
そう言って彼女はバケツを持ち、背を向けた。
「葉山」
二人だけの道場に、達也の優しい声が響く。
「好きなんだ」
もう一度、達也は言った。
次はまるで自分に念を押すように。
「君のことが、好きなんだ」
遠くで野球部だろうか、掛け声が風にのってやってくる。