はぐれ雲。
直人は、その様子を複雑な気持ちで見ていた。

もちろん彼も亮二のそんな姿を嬉しく思う。

しかし、いつまでもこれが続くわけがない。

必ず別れが来る。

それを亮二もわかっているからこそ、折に触れて考え込んだ表情を見せる。

直人にも、亮二の気持ちが手に取るようにわかる。

会いたい。
危険を冒してまでも…

それでも会わずにはいられない。

彼の背中がそう叫んでいるように思えた。

よりによって暴力団幹部と、警察官の妻。

運命とは残酷なものだな、と直人は思ったのだ。



「ケジメってもよぉ、どうすりゃいいのかさっぱりだよな」

「……」

直人は前髪をかきあげた。

「今回ばっかりはなぁ…
一度警察に目をつけられてるからな」

「ああ!もうっ!
何か俺たちで亮二さんのためにできることないのかよ」

浩介も頭をかきむしった。


次の朝、事務所で仮眠を取っていた直人たちのもとに、若い組員が息を切らせて転がりこんできた。

「た、大変です!」

二人は同時に立ち上がった。

「どうした」

直人は新聞を読み終えると、額に手をやった。

頭痛が襲ってくるようだ。

浩介は新聞を床にたたきつけると、テーブルをめいっぱい蹴った。

新聞の見出しには

「県発注のダム建設、暴力団組織関与か」

と大きく踊っていた。

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