はぐれ雲。

林が警察車両に乗せられる様子を、直人と浩介は冷たい目で2階の事務所から見ていた。


スーツケースから女の遺体が発見されたという報道があってまもなく、彼らのもとに二人の若い男が逃げ込んできた。

「た、助けてください!林さんに追われてるんです」
彼らは、亮二がまだ林のもとにいた時にかわいがっていた連中だった。

「どういうことだよ?」

「実は…」

彼らは青木真梨子の死体の処理を林に命じられたことを打ち明けた。

ホテルから遺体をスーツケースに入れて持ち出したまではよかったが、死んだ女の身体を洗ったり、切断することに恐怖を覚え、埋めてしまえば見つかることはないだろうと、そのまま山中に埋めたという。

しかし先月の大雨で地盤が緩み、土砂と一緒にスーツケースが流出してしまったというわけだ。

「何やってんだよ!!おまえら!!」

浩介は彼らを殴った。

直人は固く目を閉じ、ただ黙っている。

「すっ、すみません!どうか匿ってください!じゃないと俺たち、殺される」

「匿う?できるわけねぇだろ!」

唾を吐き捨てた浩介に、彼らは頭を床につけて懇願した。

「お願いします!」

「…わかった」

直人が静かに言う。

「正気か?おまえ!そんなことしたら俺らまでやばいだろ」

浩介が親友に詰め寄った。

それをひらりとかわす直人。

「ただし…」

そして、土下座した男の手を踏みつけて言った。

「おまえらが知ってることを、全部正直に話したら、な」

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