はぐれ雲。
その男たちは無我夢中で話した。

林の思惑を全て…

加瀬博子と新明亮二を再会させるように仕組んだのも、リサに売春斡旋を持ちかけたのも、ダム建設に関わる金の流れをリークしたのも、レンを使って亮二を殺させたことも…。

知っている限りのことを、包み隠さず話した。


浩介は怒りに震えながら彼らを殴り倒す。立てなくなるまで、何度も何度も。

「おまえら、亮二さんにどんだけ世話になったと思ってんだ!まさか…おまえらそのためにあの人に近付いたのか!」

「違います…!亮二兄さんには本当に悪いと思ってます!でも林さんには逆らえなかった!」

「うるせぇ!林じゃなくても、俺がおまえらをぶっ殺してやるよ!」

浩介の拳に血が滲む。

「許してください」

男たちは顔を腫らしながら、それでもなお命乞いをした。


「そうか」

静かだが、殺気のこもった声がした。

浩介が目にしたのは、拳銃を男の額に押し付けた直人だった。

「…直人、マジかよ」

「俺だって、ぶっ殺したいよ。林も、こいつらも」

そう言って引き金を引く。

恐怖でひきつった顔が二つ、直人の目の前に並んでいる。

一人が失禁をし、独特の鼻を突く異臭があたりに漂う。


浩介は、直人のこんな顔を見たことがなかった。

普段の彼からは想像もできないほど、血の気が失せ冷たい目をしている。

「ダム建設受注がパアになった時点で、林が怪しいとは思ってたよ。だけど、ここまで何もかも仕組んでたとはな…」

直人は拳銃を握る手に力をこめた。

「おまえたちはそれを知ってたのに黙っていた。亮二さんが林に殴られるのを見ていた。
平気だったのか?あの人はおまえらをいつも身を呈して、かばってくれただろ。何とも思わなかったのか」

「ひっ…!」

「あの人が死んで、何も思わなかったのか」

「…許してください!」

「どうなんだよ!」

怪しく黒光りする銃口を、強く男の頭に押し付けた。

「どんなことでもします!だから、だから…!」

その言葉にしばらく考えた後、直人は銃を持った手をゆっくりと下ろした。

ホッと安堵の息が男たちに漏れる。

「どんなことでもするんだな。だったら、俺の言う通りにしろ。さもないと、その腐った脳みそを一発でぶち抜いてやる」


< 393 / 432 >

この作品をシェア

pagetop