はぐれ雲。
「え~やっぱり葉山さんと付き合ってんじゃないの?」

「ない!絶対にないから」

慌てて否定するも、彼女たちは不満そうに博子の机から離れた。

それを真梨子はニヤニヤと笑った。

「ちょっと、真梨子」

「あんたね、あんなこと言ったら、新明先輩取られるよ!」

「取られるって言っても、別に私たちそんな関係じゃ…」

「じゃあ、アタックして、早く自分のものにしちゃえばいいのよ!」

博子は、真梨子の頭を数学のノートで軽く叩いた。

<でも、新明くんは本当にどう思っているのだろう>

グランドを見下ろすと、彼のクラスが体育の授業の準備をしている。

剣道以外はやる気が起きないのか、彼はダラダラとグラウンドの集合場所に向かっている。

だるそうに歩くその背中を見て、切なくなった。

一緒の学校で、一緒の部活で、一緒に帰って…

こんなにも近くにいるのに、胸が痛む。

「好き」と彼に伝えられないことが原因だとわかっていた。

でも博子は亮二と今のままでいたかった。

だから、自分から想いを伝えることはしない、そう決めていた。

怖かったから。

もし、今の関係が壊れて、そばにいられなくなることが怖かったから。

手元の数学のノートをまるめると、博子は自分の頭もコツコツと叩いた。





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