はぐれ雲。
その時「おい!」と声がして、亮二の手が緩み二人は離れる。

3年生の主将だった。

「何やってんだよ」

とっさに亮二は煙草を持っていた手を後ろに回したが、彼はそれを見逃さなかった。

「新明、隠したもの出せよ」

「何でもありません」

「見せろよ!」

主将が強引に亮二の後ろに回された手を引っ張っると、握りつぶされた煙草一箱が草の上に落ちた。

「おまえらもか」

あとの二人に主将は険しい顔で聞いた。

気まずそうに彼らは首を横に振る。


「何言ってんのよ、あんたたちのでしょ」

そう言って出て行こうとする博子を真梨子が止めた。

「なんで?」

「いいから!」声を押し殺した真梨子が手を引っ張った。

「真梨子!」

引きずられるように博子は表に連れ出される。

「なんで?なんで止めるのよ」

「あのねぇ、あんなやつらでも、新明先輩はかばうつもりなんだから。そっとしとこうよ」

「だってもとはといえば、あの人たちが喧嘩売ってきて…」

「博子。新明先輩の気持ちわかってあげなよ。ここであんたが出て行ったら、台無しじゃん。それに、あんたのことああいうふうに言われたから、先輩怒ったんだよ?」

<私のため?>

博子は、見えるはずのない道場の裏を心配そうに見つめた。

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