はぐれ雲。
「ねぇ、あんたたちどこまで進んだの」
「は?」
最高学年となった剣道部の女子更衣室。
「だからぁ、新明先輩とどこまで進んだの?」
「またその話?進んだ何も…私たち別に付き合ってるわけじゃないし」
セーラー服を脱ぎながら、博子は言った。
胸の膨らみもしっかりとし、もうオトナの体になりつつある。
「ほんっとにそんな関係のままでいいわけ?」
「あのねぇ」
「二人きりの時に、下の名前で呼ばれたりする?」
「しない」
「亮二っとかって呼ぶの?」
「呼ばない」
「じゃあ、キスは?それ以上のことは?」
「真梨子」
真剣な目で、博子は親友を制した。
「悪いんだけど、あまりその話はしたくないのよ」
「うまくいってないの?」
黙ったまま、博子はうつむき加減に白い胴着の胸元を合わせた。
「わかんないのよね」
「また言ってる。なんで?新明先輩が、あんたのこと好きかって?好きに決まってるじゃん。
そうでもないと、あの人が中学の校門前でさ、人目もあるのにわざわざあんたを待たないって」
「そうじゃないのよ、ただ、このまま新明くんを中途半端に束縛してていいのかなって」
「束縛?」